名古屋市の都市計画情報マップで自分の土地を調べてみた。用途地域が表示された。でも、それが「第一種低層住居専用地域」とか「第一種住居地域」と書いてあっても、それが土地活用にとって良いのか悪いのか、何が建てられるのかがわからないという方が多いです。
この記事は、用途地域マップの見方そのものではなく、「確認した結果、次に何をすべきか」を解説します。愛知県で土地活用の設計に30年以上携わってきた一級建築士として、用途地域ごとに建てられる建物・名古屋市の実際の建蔽率・容積率の数字・土地活用の可能性をそれぞれ具体的に整理します。
用途地域マップの確認方法(まだ調べていない方へ)
名古屋市内の土地であれば、名古屋市が公開している「なごや都市計画情報提供サービス」で用途地域・建蔽率・容積率・高度地区・防火地域をまとめて確認できます。パソコン・スマートフォンのどちらからも無料で閲覧できます。
- 「名古屋市 都市計画情報」で検索する
- 「なごや都市計画情報提供サービス」を開く
- 地図上で土地の住所を入力、またはピンを動かして該当地点を探す
- 地点をクリックすると用途地域・建蔽率・容積率・高度地区・防火地域が表示される
なお、名古屋市では令和7年(2025年)3月に第5回の全市的な用途地域見直しが実施されました。相続などで時間が経過している土地は、以前確認した内容と変わっている可能性があります。改めて最新のマップで確認することをお勧めします。愛知県内の名古屋市以外(豊田市・岡崎市・一宮市など)の土地は、各市のウェブサイトで同様の都市計画情報マップが公開されています。
建蔽率・容積率とは何か:土地活用への影響を理解する
用途地域と同時に必ず確認すべきなのが建蔽率と容積率です。この2つの数字が、土地に何㎡の建物を建てられるかを決定します。
- 建蔽率:敷地面積に対して「建物の1階部分の床面積(建築面積)」が占める割合の上限。建蔽率60%の土地に100㎡の敷地があれば、建物の1階部分は最大60㎡まで建てられる
- 容積率:敷地面積に対して「建物の全階の床面積の合計(延床面積)」が占める割合の上限。容積率200%の土地に100㎡の敷地があれば、延床面積は最大200㎡(例:50㎡×4階建て)まで建てられる
賃貸住宅の戸数・収益は容積率に直結します。同じ100坪の土地でも、容積率100%なら延床100坪、容積率300%なら延床300坪まで建てられるため、戸数・規模がまったく異なります。用途地域の名称より、この建蔽率・容積率の実数字の方が土地活用の計画立案には重要な情報です。
ただし注意点があります。容積率の上限は前面道路の幅員によってさらに制限される場合があります(道路幅員×0.4または0.6が容積率の上限となるケース)。マップで確認した容積率がそのまま使えるとは限らないため、設計者に敷地の条件を伝えた上で確認することが必要です。40坪・60坪の土地での具体的な建築可能面積の計算は40坪の土地活用アイデア【5プラン比較】も参照してください。
【住居系①】第一種・第二種低層住居専用地域だった場合
名古屋市の郊外エリア(緑区・天白区・名東区・守山区の住宅地)で最も多い用途地域です。「低層」という名の通り、建物の高さを低く抑えて良好な住環境を守ることが目的です。
名古屋市での建蔽率・容積率の実際の組み合わせ
名古屋市緑区・天白区など東部の第一種低層住居専用地域では、建蔽率と容積率の組み合わせが7種類存在します。主なものを整理すると以下の通りです。
| 建蔽率 | 容積率 | 40坪(132㎡)の延床面積上限 | 多い地区の例 |
|---|---|---|---|
| 30% | 50%・60% | 66〜79㎡ | 大規模宅地開発地区・緑地近接エリア |
| 40% | 60%・80% | 79〜106㎡ | 緑区・名東区の閑静な住宅地 |
| 50% | 80%・100% | 106〜132㎡ | 天白区・守山区の標準住宅地 |
| 60% | 150%・200% | 198〜264㎡ | 幹線道路近接の住宅地・区画整理済み地区 |
また名古屋市では第一種低層住居専用地域(建蔽率40%・容積率60%・外壁後退1.5m)の区域に、過度な市街地拡大の抑制を目的とした「特別低層住居専用地区」として合計約472ヘクタールを指定しています。この特別低層住居専用地区に該当する場合、通常の第一種低層住居専用地域よりさらに厳しい制限が加わります。
建てられるもの・建てられないもの
| 建てられる | 建てられない |
|---|---|
| 戸建て住宅・共同住宅(アパート) | 3階建て以上の大規模アパート(高さ制限による) |
| 小規模な診療所・保育所 | 店舗・事務所(第二種低層は床面積150㎡以下の店舗可) |
| 農業・林業用施設 | 工場・倉庫・ホテル |
土地活用への影響と判断のポイント
低層住居専用地域の土地活用で最も注意が必要なのは絶対高さ制限です。第一種・第二種低層住居専用地域では建物の高さが最大10m(または8m)に制限されており、木造3階建ては事実上困難です。延床面積を増やしたくても高さ方向に伸ばせないため、平屋または2階建ての範囲で計画する必要があります。
建蔽率40%・容積率80%の40坪の土地では延床面積の上限が約106㎡にとどまります。この規模では4戸アパートの建築は事実上不可能で、戸建て賃貸(1棟)または賃貸併用住宅(1〜2戸)が現実的な選択肢です。一方、容積率150〜200%が指定されている低層住居専用地域であれば、木造2階建てで3〜4戸の小規模アパートが計画できます。
【住居系②】第一種・第二種中高層住居専用地域だった場合
名古屋市内の地下鉄沿線・幹線道路近接の住宅地に多い用途地域です。低層住居専用地域と比べて高さ制限が緩和されており、マンション・共同住宅が建てやすくなっています。
名古屋市での建蔽率・容積率
| 種類 | 建蔽率 | 容積率 | 40坪の延床面積上限 |
|---|---|---|---|
| 第一種中高層住居専用地域 | 60% | 200% | 264㎡ |
| 第二種中高層住居専用地域 | 60% | 200〜300% | 264〜396㎡ |
建てられるもの・建てられないもの
| 建てられる | 建てられない(第一種) |
|---|---|
| 共同住宅・マンション(階数制限なし) | 店舗・飲食店(第二種は床面積1,500㎡以下の店舗可) |
| 病院・大学・各種学校 | ホテル・旅館 |
| 事務所(第二種は2階以下かつ1,500㎡以下) | パチンコ・カラオケ等の遊戯施設 |
土地活用への影響と判断のポイント
中高層住居専用地域は土地活用において最もバランスが良い用途地域のひとつです。絶対高さ制限がなく(斜線制限・日影規制は適用)、容積率200〜300%が確保されているため、木造3階建てアパートや鉄筋コンクリート造の中規模共同住宅が計画できます。
注意点は日影規制です。中高層住居専用地域では3階建て以上・高さ10m超の建物に日影規制が適用され、隣地への日影時間が制限されます。建物を高くするほど隣地への影響が大きくなるため、日影計算を行いながら建物形状を決める必要があります。これは設計段階で慎重に検討すべき項目です。
【住居系③】第一種・第二種住居地域・準住居地域だった場合
名古屋市内の幹線道路沿いや地下鉄駅から少し離れたエリアに多い用途地域です。住宅系を基本としながら、一定規模の店舗・事務所・ホテルも建てられるため、用途の幅が広がります。
名古屋市での建蔽率・容積率
| 種類 | 建蔽率 | 容積率 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| 第一種住居地域 | 60% | 200〜300% | 3,000㎡以下の店舗・事務所・ホテル可 |
| 第二種住居地域 | 60% | 200〜300% | 10,000㎡以下の店舗・カラオケ等可 |
| 準住居地域 | 60% | 200〜400% | 自動車関連施設・劇場(200席以下)等も可 |
土地活用への影響と判断のポイント
住居地域以上になると住宅以外の用途も選択肢に入る点が大きく変わります。たとえば第一種住居地域なら、1階にコンビニや診療所を入れた店舗付き住宅(3,000㎡以下の店舗兼用住宅)が建てられます。準住居地域では自動車販売店・整備工場・コインランドリーなど、より幅広い用途が可能です。
ただし幹線道路沿いの土地は騒音・排気ガス対策が住宅の設計上の課題になります。住宅系の土地活用(アパート・賃貸住宅)では、道路側に居室を配置しない間取りや、二重サッシ・防音壁の採用を検討する必要があります。また準住居地域・第二種住居地域はデイサービスや障がい者施設の用地としても適しており、福祉施設用地として貸し出す選択肢も検討できます。詳しくは小さな土地を福祉施設用地として活用する方法を参照してください。
【商業系】近隣商業地域・商業地域だった場合
名古屋市内の地下鉄駅周辺・商店街・幹線道路沿いの商業集積エリアに指定されています。用途の制限が最も少なく、建物規模も大きく取れるため、土地活用の選択肢が最も広い用途地域です。
名古屋市での建蔽率・容積率
| 種類 | 建蔽率 | 容積率 | 40坪の延床面積上限 |
|---|---|---|---|
| 近隣商業地域 | 80% | 200〜400% | 264〜528㎡ |
| 商業地域 | 80% | 400〜800%(一部それ以上) | 528〜1,056㎡以上 |
なお、名古屋市では栄周辺の一部の商業地域に「中高層階住居専用地区」として合計約114ヘクタールを指定しており、この地区内では一定の条件を満たさない建物の容積率に別途制限がかかります。都心近接の商業地域の土地は、このような重畳的な地域地区の指定がないか確認することが重要です。
建てられるもの
近隣商業地域・商業地域では、住宅・事務所・店舗・ホテル・病院・映画館・風俗営業施設(商業地域のみ)など、ほぼ制限なく建てられます。工場・危険物貯蔵施設は除外されますが、土地活用の観点からはほぼすべての用途が検討可能です。
土地活用への影響と判断のポイント
商業系用途地域の土地で小規模(40〜60坪)な土地活用を検討する場合、容積率を最大限活用した中層建物(4〜6階建て)の賃貸住宅または店舗・事務所の複合ビルが選択肢に入ります。ただし中層以上の建物は構造が鉄骨造またはRC造になり、建築費が木造の1.5〜2倍以上かかるため、事業計画の精度が重要です。
また商業地域の土地を駐車場として活用するのは大きな機会損失になることがあります。容積率400〜800%の土地を月極駐車場のままにしておくのは、土地の持つ建築ポテンシャルをまったく使っていない状態です。近い将来に建築を検討しないのであれば、コインパーキング会社への一括借上げで当面の収入を確保しながら、将来の建築計画と並行して検討する形が現実的です。
商業地域の土地に隣接して住居系の土地がある場合、両方を合わせて一体活用することで建物規模を大きくできます。合筆・隣接地の活用については「親の家と隣の空き地」相続した隣接土地を一体活用する裏技とは?も参考になります。
【工業系】準工業地域・工業地域・工業専用地域だった場合
名古屋市内では港区・中川区・熱田区・南区の臨海部・工業集積エリアに多い用途地域です。住宅系・商業系に比べて注意が必要な点が多いため、相続などで工業系用途地域の土地を取得した場合は慎重な確認が必要です。
3種類の違いと名古屋市での建蔽率・容積率
| 種類 | 建蔽率 | 容積率 | 住宅 | 店舗・事務所 |
|---|---|---|---|---|
| 準工業地域 | 60% | 200〜300% | 建てられる | 建てられる |
| 工業地域 | 60% | 200% | 建てられる | 一部可(店舗は50㎡以下) |
| 工業専用地域 | 60% | 200% | 建てられない | 建てられない(工場・倉庫のみ) |
工業専用地域は住宅・店舗・事務所を一切建てることができません。賃貸住宅による土地活用は不可能で、倉庫・工場の用地として貸し出すか、工業系の事業者に売却することが現実的な選択肢になります。
準工業地域は用途の幅が広く、住宅・店舗・工場・倉庫が混在できます。ただし名古屋市では準工業地域の全域に「大規模集客施設制限地区」を指定しており、店舗等の用途に供する床面積が10,000㎡を超える建築物の立地が規制されています。大規模商業施設の建築を検討する場合は確認が必要です。
名古屋市特有の重畳規制:高度地区・防火地域
用途地域に加えて、名古屋市には独自の規制が重なっている場合があります。用途地域だけを確認して「建てられる」と判断しても、これらの規制でさらに制約を受けることがあります。
高度地区
名古屋市は独自の高度地区(建物の高さを制限する地区)を設定しています。指定高さは20m・31m・45mの3種類が主なもので、住居系用途地域の多くに20m規制が適用されています。たとえば容積率200%の土地でも高度地区20m制限が適用されれば、木造・鉄骨造で5〜6階建て程度が上限になります。容積率を使い切るために必要な階数と高度地区の高さ制限が合致するか、設計前に確認が必要です。
準防火地域・防火地域
名古屋市内の市街化区域の大部分は準防火地域に指定されています。準防火地域では木造3階建て以上に準耐火建築物の仕様が求められ、建築費が通常より上昇します。また防火地域(名古屋市中心部・幹線道路沿い)では、原則として耐火建築物(鉄骨造・RC造等)しか建てられず、木造での建築が制限されます。なごや都市計画情報提供サービスで防火地域の指定も同時に確認してください。詳細は名古屋市でアパートを建てる前に確認すべき7つのことで解説しています。
用途地域を確認した後の次のステップ
用途地域・建蔽率・容積率・高度地区・防火地域をマップで確認したら、次は以下の順序で具体的な検討を進めます。
- 前面道路の幅員を確認する:道路幅員が容積率を制限していないか確認。4m未満の道路に面している場合はセットバックの必要がある
- 接道状況を確認する:建築基準法の接道義務(道路に2m以上接すること)を満たしているか確認。旗竿地・狭小地では建築できないケースがある
- 土地の形状と方位を確認する:南向きか北向きか、整形地か不整形地かによって建物の配置が変わる。斜線制限の影響も敷地形状次第で大きく変わる
- 用途地域に合った活用プランを絞り込む:低層住居専用地域なら戸建て賃貸・小規模アパート、中高層なら共同住宅、商業系なら複合ビルというように、用途地域に対応したプランで検討を進める
- 建築士・設計事務所に相談する:法規条件が複数重なっているケースでは、専門家に現地確認を依頼することで計画の精度が上がる
相続した土地の活用を検討している場合は、用途地域の確認と並行して相続税評価・固定資産税の現状も整理しておくことをお勧めします。相続した土地の活用アイデア【名古屋・愛知版】では、相続後の手順と選択肢を整理しています。また市街化調整区域と表示された場合は、用途地域の規制とは別のルールが適用されます。市街化調整区域の裏技と活用方法【名古屋・愛知版】を参照してください。
まとめ:用途地域は「入口」、次の判断材料を揃えることが重要
用途地域の確認は土地活用の入口です。用途地域がわかっても、それだけでは何が建てられるかの全容は見えません。建蔽率・容積率・高度地区・防火地域・前面道路幅員・接道状況・敷地形状——これらを合わせて初めて、その土地に建てられる建物の規模と用途が決まります。
この記事で解説した用途地域ごとの特徴は、あくまでも方向性を判断するためのものです。実際の土地に何が建てられるかは、現地の条件を確認した上で設計者が判断する必要があります。「自分の土地はどのプランが現実的か」を知るには、用途地域の確認だけでなく、建築士への相談が次のステップになります。

