【はじめに】
「土地はあるけど狭くて使い道がない」「年齢的に大きなリスクは取りたくない」——。
そんなお悩みを持つ地主さん、高齢のご家族からのご相談が近年非常に増えています。
特に相続した土地や、昔の実家の敷地を持て余しているケースでは、アパートやマンションを建てるには広さも資金も足りず、かといって売るにはもったいない。
そんなときに注目されているのが「戸建て賃貸」という土地活用方法です。
この記事では、「なぜ戸建て賃貸が高齢者に向いているのか」「狭小地でも収益化できる仕組み」などをわかりやすく解説します。
※ここで紹介する金額はあくまでも参考金額です。金額を保証するものではありません。
第1章:戸建て賃貸とは? 基本の仕組みを解説
1-1. 戸建て賃貸の定義
戸建て賃貸とは、アパートやマンションではなく、一戸建て住宅をそのまま賃貸物件として貸し出すスタイルのことです。
入居者は一軒家に住めるメリットを得られ、オーナーは戸建てという“シンプルな構造”ゆえにメンテナンスや管理が楽になります。
1-2. 賃貸市場でのニーズの高まり
コロナ禍以降、「隣と壁を接していない安心感」や「家族で暮らせる戸建て志向」が強まり、都市部郊外では特にファミリー層の需要が高まっています。
また、ペット可・庭付きなど柔軟な条件をつけられるため、入居が決まりやすいのも特徴です。
第2章:なぜ高齢者に向いているのか? 5つの理由
2-1. 小規模な建築でOKだから資金リスクが低い
アパートは2〜4戸以上建てる必要があり、建築費が数千万円以上かかるのが一般的です。
一方、戸建て賃貸なら1戸だけでも収益化できるため、1,200〜2,000万円前後の予算でも対応可能です。
年金生活の方や相続後の資産活用としても“身の丈に合った”土地活用が可能です。
2-2. 狭小地でも建てられる
建築基準法の制約内であれば、20〜30坪の土地にも建てられるコンパクトな設計が可能です。
最近では“ミニ戸建て”と呼ばれる、15〜18坪程度の建物も人気があります。
例:
- 敷地面積:20坪
- 建物延床:15坪〜18坪(2階建)
- 駐車場なし or 軽自動車用1台分
2-3. 管理がシンプルで手間が少ない
戸建て1戸だけの管理で済むため、
- 共用部の清掃なし
- ゴミステーションの管理不要
- 騒音トラブルも少ない
といった点が高齢者にとっての大きな安心材料となります。
2-4. 節税にもつながる
土地に建物を建てることで固定資産税の軽減措置が受けられたり、小規模宅地の評価減が適用される可能性もあります。
また、賃貸事業として所得を得られれば、年金以外の安定した収入源にもなります。
2-5. 売却・相続しやすい「出口戦略」の柔軟さ
将来的に売却したくなった際、戸建て賃貸はアパートと違って
- 自分の住居にする
- 子どもや孫に譲る
- 投資用物件として売却する
など、選択肢が多く、相続時のトラブル回避にもつながります。
第3章:どんな土地に向いている?
3-1. 狭小地(15〜30坪程度)
- 旗竿地
- 間口が狭い土地
- 変形地(L字型・台形など)
これらも工夫次第で戸建て賃貸が可能です。都市部では逆に“戸建てが建つ土地”として希少価値があることも。
3-2. 接道条件に注意
接道幅が2m以上あること、建築基準法上の道路に接していることが基本条件です。
土地の形状によってはセットバックが必要になるケースもあるため、専門家に確認を依頼するのが安心です。
第4章:収益シミュレーションと費用の目安
4-1. 建築費の目安
- 平均的な戸建て賃貸:1,500〜2,200万円前後
ハウスメーカーによっては「戸建て賃貸専用プラン」があり、費用を抑える工夫も豊富です。
4-2. 家賃の相場
- 郊外:6〜8万円/月
- 地方都市:5〜7万円/月
- 都市部:8〜12万円/月
高グレードな設備やデザイン性を重視すればさらに高い家賃も見込めます。
4-3. 表面利回りの目安
- 6〜9%前後
- ローン返済後は老後の家賃収入として安心材料に
第5章:設計上のポイント(建築士視点)
5-1. 狭小地向けの間取り設計
- 1LDKや2DKが主流
- ロフト付きや吹き抜けで空間の広がりを演出
- 階段の配置と収納の工夫で実用性をアップ
5-2. 高齢入居者にも配慮するならバリアフリー対応も視野に
- 玄関の段差解消
- トイレ・浴室の手すり
- 将来的な高齢者向け賃貸への転用も可能
第6章:成功事例紹介(実在の自治体支援+実例)
6-1. 神奈川県川崎市|市街地の狭小地に戸建て賃貸
- 所有者:70代女性
- 土地面積:約25坪(変形旗竿地)
- 建物:2階建て・1LDK×1戸
- 建築費:約1,800万円(市の助成金活用:100万円)
- 家賃:月9万円
- 結果:老後資金として年108万円の安定収入を確保
第7章:高齢者が始めるときの注意点
7-1. 無理のない資金計画を
- 建築費用はローンだけに頼らず、手持ち資金とのバランスを重視
- 一括借り上げ方式なども要検討(ただし条件の確認が必須)
7-2. 建築業者の選び方
- 戸建て賃貸に実績のある会社を選ぶ
- 地元のハウスメーカーや工務店でも積極的に対応してくれる場合が多い
- 複数社の見積もりを比較するのがポイント
7-3. 入居者管理の委託も視野に
- 高齢者が直接対応するのは負担大
- 管理会社に委託すれば、家賃管理・クレーム対応も不要に
【まとめ】戸建て賃貸は「小さく始める土地活用」に最適
戸建て賃貸は、
- 狭小地でも建てられる
- 初期費用が抑えられる
- 管理が楽
という点から、高齢者や資金に余裕のない方でも無理なく始められる“身の丈に合った”土地活用の選択肢です。
アパートほど大規模ではなく、月数万円の家賃収入をコツコツ積み上げられる安心感。
さらに、建物の資産価値も維持しやすく、将来の相続・売却時にも柔軟に対応できます。
「空いている土地をこのまま放置するのはもったいない」と感じたら、まずは戸建て賃貸というシンプルな活用法から検討してみてはいかがでしょうか。