古い家付き土地、取り壊す前に考えるべき3つの選択肢

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はじめに:解体するのは簡単。でもちょっと待って!

相続などで取得した土地に、築30年、40年を超える古い住宅が残っている——そんなケースは少なくありません。
「古いし、人も住んでないからとりあえず解体して更地にしよう」と考える方も多いですが、実はこの判断、少し慎重になるべきです。

なぜなら、古家があることで得られる節税や活用の可能性を、解体によって失ってしまう場合があるからです。
今回は、解体前にぜひ検討したい「3つの選択肢」を、建築士の視点も交えながら解説します。

1. 更地にして駐車場などで活用する

古い家が建っている土地を更地にして、「時間貸し駐車場」や「月極駐車場」として活用する方法は、初期費用が比較的抑えられることから、検討する方が多い選択肢のひとつです。

特に駅や病院、商業施設の近くでは需要が高く、月3万円前後の安定した収入になるケースもあります。また、アパートのように空室リスクがないこともメリットです。

✅ 具体例:駅徒歩10分の旗竿地

たとえば、相続した土地が「駅徒歩10分・住宅街の旗竿地」で、建物の老朽化が進んでいた場合。

家屋を取り壊してみたところ、間口が2.5mしかなく、普通車は出入りしづらいことが判明。
結果として「軽自動車1台分の月極駐車場」にするのが最も現実的、という結論に至ったケースもあります。

このように、いざ更地にしてからでないと使い方が決まらないこともあるため、事前に動線や高低差などの調査が必要です

✅ 注意点:アスファルト舗装や照明設備が必要なことも

単純に「更地にすれば収益化できる」とは限りません。

  • 砂利だけでは見た目が悪く、契約が決まらない
  • 雨の日にぬかるむとクレームになりやすい
  • 夜間に照明がないと防犯上の不安が残る

このようなケースでは、「アスファルト舗装+車止め設置+ソーラーライト設置」など、最低限の整備に数百万円程度かかることもあります。(土地の大きさによる)

✅ 管理会社との連携も重要

駐車場として貸し出す場合でも、管理や集金・契約更新を代行してくれる会社を選ぶかどうかで、手間も収益も変わってきます。

最近ではコインパーキング業者と契約して一括借上げしてもらう方式も人気です。
この方法なら、稼働率に関わらず一定額の賃料が入ってくるため、「空き地の放置が不安」という方に適しています。

✅ 建築士の視点

一見「平坦で広く見える土地」でも、駐車場として使いにくいケースがあります。
たとえば、前面道路が狭くて車が入りにくい/出にくい場合や、道路との高低差がある土地では、利用者が敬遠することもあります。

例:

  • 間口が2.5mしかない旗竿地 → 軽自動車1台のみ可
  • 高低差が1.2mある土地 → 擁壁やスロープ整備が必要で追加コストがかかる。

駐車場に適しているかどうかは、現地確認とあわせて、「自動車の動線(出入りのしやすさ)」を図面でシミュレーションすることが大切です。

2. 建て替えて賃貸住宅にする

古い家を取り壊したあと、その土地にアパートや戸建て賃貸などを建てて貸し出す方法です。
「土地を手放したくない」「長期的に安定収入を得たい」という方には、有力な活用手段となります。

✅ 具体例:20坪の整形地に戸建て賃貸を建築

たとえば、都市部にある20坪(約66㎡)の整形地に築50年の木造住宅が建っていたケース。

建築士として調査したところ、共同住宅(アパート)では住戸数が確保しにくく、採算が合わないため、1LDK〜2LDKの戸建て賃貸住宅を2戸建てる計画に変更。
最寄り駅まで徒歩8分で、子育て世代や単身者のニーズがあるエリアだったため、1戸あたり月11万円で賃貸成約に成功しました。

ポイント:小規模な土地でも、「戸建て賃貸」はアパートより設計の自由度が高く、需要をうまく捉えることができます。

✅ 建築費と利回りのバランスに注意

賃貸住宅は、建築費と賃料収入のバランス=利回りが非常に重要です。

  • 建築費:木造2階建てアパート(4戸)で約4,000万円〜5,000万円
  • 表面利回り:月収入28万円なら年間336万円 → 利回り約7〜9%

ただし、空室リスク・修繕費・固定資産税も含めて収支計画を立てなければ、期待したほどの利益が出ないことも。

✅ 建築士の視点:土地条件に合わせた「建て方」の工夫が重要

古い土地は、以下のような条件がある場合も多いため、設計段階で工夫が必要です。

  • 接道幅が2mギリギリ → 建築基準法上の制約
  • 高低差がある → 擁壁の補修や階段設置が必要
  • 日影規制、斜線制限 → 高さや階数に制限あり

このような条件をクリアするため、建築士が早い段階で建てられる建物のボリューム感を把握し、「どの程度の収益物件にできるか」シミュレーションすることが大切です。

✅ 管理・運営も長期視点で

建てたあとは、賃貸管理会社と契約して運営を委託するのが一般的です。
入居者対応、家賃回収、修繕などを代行してくれるため、地主さん本人が高齢であっても長期運用が可能です。

3. 古民家リノベーションで再活用する

築年数が古く、今の生活様式には合わなくなった家でも、リノベーションすることで再活用できる可能性があります。
近年は「古民家カフェ」「民泊」「賃貸住宅」「シェアスペース」など、古さを活かした活用法に注目が集まっています。

✅ 具体例:築60年の木造平屋を古民家カフェに

ある郊外の住宅地にある築60年・延床面積25坪ほどの平屋。
相続後は空き家となっていたが、地元の方と相談してカフェ兼コミュニティスペースとしてリノベーション。

  • 和室の柱や梁は活かしつつ、床や壁を断熱+内装刷新
  • キッチンを業務用に変更し、店舗申請
  • トイレ・手洗いをバリアフリー対応に改修

建物の魅力を活かしながら、収益と地域活性化の両立を実現しました。

✅ 建築士の視点:再利用できるか、まずは建物調査が必須

古民家再生は夢のある計画ですが、以下の点でしっかりと調査が必要です。

  • 構造の安全性(シロアリ被害、腐朽、傾き)
  • 耐震性能(現在の耐震基準に適合するか)
  • 断熱・気密・給排水・電気配線などインフラの状態

調査結果次第では、リノベより建て替えの方が安いケースもあります。
また、用途変更(例:住宅→店舗)には用途変更申請や消防法の適合も必要になることが多いため、専門家との連携が不可欠です。

✅ 活用法いろいろ!ターゲットに合わせた戦略を

リノベ後の活用方法はさまざまですが、地域や立地によって適した用途が変わります。

活用方法向いている立地特徴
古民家カフェ観光地、郊外の住宅街雰囲気重視。SNSで集客しやすい
賃貸住宅駅徒歩圏、住宅エリア家賃はやや低め。DIY型賃貸も人気
民泊観光地、交通利便性が高い観光客向け。許認可と管理体制が重要
シェアオフィス市街地近郊クリエイター・個人事業主向け
地域の集会所地方都市、過疎地域地域の交流拠点として行政支援が得やすい

✅ リノベで「思い出」と「資産価値」を両立

「父が建てた家を壊すのが忍びない」「古き良き思い出を残したい」という方にとって、リノベーションは気持ちの整理と新たな価値の創造を両立させる手段でもあります。

建築士としても、「残す」「直す」「使う」という視点でプランニングすることで、他にはない唯一無二の活用法をご提案することが可能です。


このように、古民家リノベーションは初期費用や手間こそかかりますが、独自性とストーリー性で高付加価値の活用ができる選択肢です。
地域性や建物の状態に応じた「無理のない再生計画」が成功の鍵になります。

✅ 建築士の視点

古民家の多くは、耐震性・断熱性・給排水設備の老朽化などに課題があります。
特に1971年以前の建物は、現在の耐震基準を満たしていないため、耐震診断と補強設計が必須です。

例:

  • 柱の腐食、基礎のひび割れ → 耐震補強
  • 水回りの再配置 → 給排水管の引き直し

ただし、自治体によっては「空き家リノベ補助金」や「耐震改修補助金」があり、最大100万円前後が補助される場合もあります。
活用を視野に入れるなら、まずはホームインスペクション(住宅診断)で現状を正確に把握することが第一歩です。

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